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2008年7月 6日 (日)

日本映画史に残る群像劇! 映画「クライマーズ・ハイ」!

私は最初に横山秀夫・原作「クライマーズ・ハイ」の初版を発売されてすぐ読んだ。
すぐに読んだ理由は、「1985年日航ジャンボ御巣鷹山墜落事故」の数年前に長崎大水害を体験し、私個人の死生観に対する考えがが大きく変化した事と、この事故自体があまりにも途方もない出来事であったからだ。
それ以前から、「日航ジャンボ御巣鷹山墜落」に関する書籍は数多く貪り読んでいた。
その中でも・・・

朝日新聞社会部・「日航ジャンボ機墜落―朝日新聞の24時 」
http://www.amazon.co.jp/dp/402255441X/

著・吉岡忍「墜落の夏―日航123便事故全記録」
http://www.amazon.co.jp/dp/4103630019/

著・飯塚 訓「墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便 」
  http://www.amazon.co.jp//dp/406209259X/

「茜雲 総集編―日航機御巣鷹山墜落事故遺族の二〇年」
http://www.amazon.co.jp/dp/4880239151/

…これらの書籍には大きく胸を打たれた。
(その他にトンデモ本の類の本が数冊あったが…)

私は、1985年8月12日のその日、お盆前で既に故郷に帰省していたが、バイトも休みで、実家で、ユルイ晩飯を食いながら、TBS系列「関口宏司会・クイズ100人に聞きました!」をダラダラと観ていた・・・。
その時、突然、あの理解不能な「ニュース速報」が流れた…。
その後、テレビとラジオが不確定な墜落現場を伝えるるのだが、それが、局によって、時間によって、変化した。
群馬、長野、埼玉・・・・また、長野、群馬・・・。
ジャンボが墜ちたのは間違いないのだが、深夜1時を過ぎても、墜落現場が何処なのかマス・メディアの流す情報は一行に定まらなかった。
米軍横田ベースも、航空管制も、多少の誤差はあるのだろうが、何故、現場が特定出来ないのかが不思議でならなかった。
落ち着かず、眠れず、NHKのTVとラジオをずっと聴いていた。
夜が明けて、ヘリから衝撃的な空撮映像が映し出される・・・赤い鶴のマークとジャンボの羽。周りは燻り煙を上げている。
あのジャンボの大きな機体はまさしく粉々になっていた・・・。
お盆の時期の帰省ラッシュ、524名と言われた、乗客、乗員はもうダメだろうと思った。例えようのない喪失感・・・。

悲しい事にPCの文字入力ソフト「IME」変換で「OSUTAKAYM」と打つと、あっさり「御巣鷹山」と変換されてしまう。
何事も無かったなのなら絶対に変換されない文字だ。

この原作はまずNHK・デジタル総合において土曜ドラマの枠内で二部構成で映像化された。
主演・佐藤浩一の傑作ドラマだった。
TVドラマという限られた規制の中でも「クライマーズ・ハイ」は心に届く傑作だった。

俺はこの作品を監督・原田眞人で制作するという話を知った時、『さらば映画の友よ インディアンサマー』(1979年) とかってコンチネンタル・サーカスと呼ばれた二輪世界GP250ccクラスの世界を姿を描いた『ウインディー』(1984年)を描いた天才肌と、クソ映画『ガンヘッド』(1989年)、傑作映画 『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(1999年)、権力迎合主義映画『突入せよ! あさま山荘事件』(2002年)を制作した監督だけに、信頼出来る、それとも、まったく信頼出来ないのか・・・・。
題材が題材だけにどちらかというと不安の方が大きかった。
正直、NHK・デジタル総合ドラマ以上のものは期待していなかった・・・。
尚且つ、俺はこのブログでクソ映画「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」は観なくても、三谷幸喜・監督「ザ・マジック・アワー」は観ておいて損はないといった。

だが、いきなり間髪を置かず今年の夏公開の邦画でそれを上回る傑作が誕生した!
黒澤明「天国と地獄」、韓国の巨匠・ポン・ジュノ「殺人の追憶」…これらに匹敵する傑作の誕生!
映画「クライマーズ・ハイ」はこの夏公開される一番の傑作だ!
(2008年7月5日土曜日はイギリスのポリス・アクション・ムービーの傑作「ホット・ファズ」(欧州・全米は昨年大ヒット)も東京などは、同日やっとこ公開にこじ付けて是非、観て頂きたいのだが、この夏、どうしても、一本しか映画を観れないという方には是非、映画「クライマーズ・ハイ」を選択して頂きたい。)

この夏の公開映画は確かに豊作だ!
メジャータイトルだけでも既に全米公開済のエドワート・ノートン主演・脚本、監督 ルイ・リテリエ 「インクレディブル・ハルク」、ロバート・ダウニー・Jr 主演「アイアンマン」を筆頭に、のM・ナイトシャラマン監督「ハプニング」等々…それぞれ既に私が拝見させて頂いた映画だけでも見所は満載だ。
(何度も言うけど「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」はダメ。観る価値なしね。)

上記のハリウッド・メジャー映画と比較すると確かにこの邦画は辛いし、悲しい、虚しいし、この映画が見せてくれる世界は重過ぎる。(フィクションなのにフィクションでないという悲しさ。)
だが、ある種の青春の暴走と儚さを描いた・・・若松孝二監督の傑作・映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」が精神世界の重さを表現しているのに対し、こちらは良い意味で分かり易くく創られている。
其処が手練れ監督・原田眞人の悪いところでもあり、良いところでもあるのだが…。
しかし、何と言おうと、日本に於いて、あの1985年8月12日からのあの時間を体験し、共有した人間ならばこの映画を観た誰もが自身の心に問い掛けを行う事になるであろう。

「人として極限の節目を迎えた時、一体、人は何を選択すべきなのか?」

共産主義的・社会主義的自己批判でもなく、資本主義社会の矛盾でもなく…。
人の命を最も重んじる道筋(社会 or 思想)とは一体何なのか…。
間違いなく、この映画はその問いに対し、喉元に刃物の切っ先を突きつけた映画であった。

横田ベース(横田基地)から飛び立った米軍はかなり早い時間に事故現場に到着し、夜間降下する準備まで出来ていたという。
これは米軍側と数少ない生存者の証言と一致するとも言われている。
映画ではこの辺りの政治的ニュアンスについては具体的に触れないが、当時の総理大臣・中曽根と福田の対立構図、事故3日後の戦後初の総理(中曽根)終戦記念日靖国参拝という間接的な出来事で、なにかしらの政治的背景があった事を映画の中でも匂わせている。
これは、日航ジャンボ御巣鷹山墜落の原因についてのスクープを群馬・北関東新聞の全権デスク・悠木和雅(堤真一)が抜くか抜かないかの判断を迫られた時、メディアの真実と良心に従うシーンに集約されている。
映画を観た方(観る方は)、ギリギリの時間まで原因追究を探る県警キャップ・佐山(堺雅人)と地域報道班・玉置千鶴子(尾野真千子)と全権デスク・悠木の遣り取りをしっかりと見据える事が出来ただろうか?

1985年8月12日から始まったあの悲しい記憶に僕らは今一度立ち向かわなくてはらない。
そうすると、今、起きている日本現代社会問題の象徴がこの事に集約されていた事に気付く筈だ。

この映画を観て、自分が生きている事、生かさせて頂いている事について考えてみて頂きたい。
また地方ローカル・メディアとマス・メディアの差異についても考えて頂きたい。
そして、何よりも、自分と家族、第三者の命について思いを馳せて頂きたい。

尚、この映画で日本映画界の名バイプレイヤーたちが凄まじい演技を見せている事を添えておく。
特筆すべきは、『でんでん』、『蛍雪次郎』、『遠藤憲一』この3人! 

その他…堺雅人 、堀部圭亮 、田口トモロヲ、マギー、皆川猿時、西田尚美 ・・・も本当に素晴らしい!
日航ジャンボ墜落から始まる群馬・北関東新聞(もちろん架空の新聞社であるが、原作を読まれた方は納得が行く筈)の緊迫した群像劇にはクギ付けになる筈だ。
主演の堤真一については敢えて触れないでおく。まぁ、見て下さい。
それと私が大嫌いな河瀬直美・監督作品『殯の森』で主演した…尾野真千子の何とも魅力的な事!(『殯の森』の無意味なヌードで勃起する間抜けな男どもよ。この映画のツンデレな彼女の色香にに起て!)

逆にかなり残念なのが大御所・山崎務の使い方(使われ方)・・・なんで、あんな素晴らしい役者さんを伊丹映画の延長のようなキャラに据えるのか。
(誤解しないで頂きたい。伊丹映画での大御所のキャラ作りが悪いと言っているのではない。あのキャラを引き出したのは伊丹監督だけで結構!とういう意味だ。)
滅茶苦茶上手いいだけに、余計に目触りなのだ。だから彼の出演シーンだけリアリティが欠如してしまう。

ちなみにイメージソングとなっている大げさな『元ちとせ』の歌う「蛍星」は劇中にもエンドロールにも流れない。
その代りに、絶妙のタイミングで入る『ナット・キング・コール』の歌う名曲「モナリザ」は必聴!
唐突なので、何でこのシーンに「モナリザ」?・・・と思うのだが、尾野真千子が現われて全ての意味を理解する。

膨大なカット、素晴らしい編集、過去の中に埋め込まれる現在・・・ドラマと圧巻の映像に圧倒される!
そして、この事故(事件?)がまだ何も終わっていないという現実。

無駄なCGや煩わしい音楽が無くとも、ここまでシリアスなテイストのドラマをまだ描く事の出来る日本映画の底力を五感で感ぜよ!
観るべし!

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