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2008年8月 3日 (日)

映画史上最高傑作誕生!暗黒の騎士(ダークナイト)が暗黒へと逃亡しなくてはならない理由と時代…映画バットマン「ダークナイト」(原題:「THE DARK KNIGHT」)

素晴らしい役者というのは何故、死の直前に光を放つのだろう…?
死という暗闇の光を纏うからなのか?

この映画の主役はバットマンことブルース・ウェイン役のクリスチャン・ベールではなく、間違いなく今は亡きジョーカー役のヒース・レジャーだ。
この暗闇に支配される映画で彼は本当に暗闇の光を放ち続ける。

オーストラリア出身の彼が日本の多くの人々に知られるようになったのはメル・ギブソン主演「パトリオット」と主演作「ロック・ユー!」であろう。
どちらかというと青春の陰ではなく青春の陽の雰囲気と荒々しさを見せてくれる素晴らしい若い役者だった。
それが2005年、アン・リー監督「ブロークバック・マウンテン」では果てしない陰を演じられる事を証明し、世界中が絶賛した。
それでも、多くの人が彼がジョーカーを演じる事に大きな疑問符を付けていた筈だ。

ジョーカーといえばティム・バートン監督の傑作映画「バットマン」第1作ではあのジャック・ニコルソンが怪演した役だ。
ジャック・ニコルソンはDCコミックのジョーカーを遥かに凌駕したが、あれ以上のジョーカーなど存在する訳がない。
だが、ヒース・レジャーはそのジャック・ニコルソンさえピエロに思えるほどジョーカーになりきってしまい人生を全うした。
彼はジョーカーを演じるために生まれ、そして闇に取り込まれ死んだのかもしれない。
(むろん、実際の彼の死因は、医薬品の過剰摂取による急性薬物中毒であったのだが…この映画の彼を観ると、闇に取り込まれたとしか考えられない)

ヒース・レジャー演じる「ジョーカー」のダークサイドを知ると言葉を失うだろう。
「スター・ウォーズ」の悪の権化「ダース・ベイダー」のダークサイドなどまだチンケなものだ。

この映画「ダークナイト」(原題:「THE DARK KNIGHT」)はこれまでの映画の既成概念などいとも簡単に打ち破ってしまった。
これは歴史に残る傑作だ!
152分と最近のハリウッド映画の中ではかなり長い時間なのだが、この映画の世界観を描き切るには納得せざろう得ない当然の時間に思える。
長年映画を観ていて来たが、これ程、時間を感じさせない映画は私も初めてだった。
「マトリックス」のような上っ面の精神世界を描いた映画ともまったく違うし、これまでの「バットマン」シリーズとも何もかもが違う。
何もかもが圧倒的なのだ。
圧倒的なストーリー、圧倒的な音楽、圧倒的な破壊、圧倒的なアクション、圧倒的なドラマ、圧倒的な悪、圧倒的な正義、圧倒的な信頼、圧倒的な愛、圧倒的な憎しみ、そして、圧倒的な漆黒の闇…。

こんな映画、いまだかって見た事が無い。

「バットマン」のアイコンのみに魅かれて行くと痛い目に合うし、アクションやハッピーエンドを期待しているとそんな浅はかな自分が虚しかったものとさえ感じさせられるかもしれない。
ただ、エンドロールを迎えた時に何か途轍もないモノを提示された現実に多くのの観客が呆然と立ち竦むであろう。
映画の全編に渡って映画音楽の鬼才ハンス・ジマーが「バットマン・ビギンズ」で書いたあの重いスコアのテーマ曲が、さらにバージョンアップし、闇のベールを纏わせる様に圧し掛かってくる。
実際、普段ならエンドロールが始まるとそそくさと立ち上がる人が多数いた筈なのに皆、椅子の上に縛り付けられているような異様な空気を感じた。
だから、エンドロールが終わるまで、ほとんどの人が立ち上がらなかった。

この映画で描かれる暗黒(ダーク)は現代社会の人間の闇そのものであるし、この映画で描かれる微かな希望もまた現代社会の人間の微かな希望そのものである。
ジョーカー、バットマン、そして後半登場するトゥー・フェイス、彼らは人間そのものであり、同じカードの裏と表でもある。
全ての人間の心の中にこの映画で象徴されるジョーカーは間違いなく存在する。
ヒース・レジャーはジョーカーを介し、人の心の闇を見せ付けててくれた。彼は何処かでこれから訪れる現実の死を感じていたのかもしれない。
正直、これを演技と言っていいのかさえ分からなくなってしまった。
演技者として今は亡き彼が賞レースに関わる事なんぞ、もうどうでもいい。
この映画で築かれた新らたな世界観は現実社会とイコールであったし、それは観る者の心を大きく揺さぶるモノであった。
この映画のラスト、暗黒の騎士「バットマン」はヒーローの地位を自ら捨て、「正義と希望」という最後の砦を守るために、何もかも捨て去り、孤独な暗黒の世界へと逃亡を始める。

それが、何を意味するのかは実際に映画館で感じて頂きたい。

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